変わりゆく銀行業界―「安定」の幻想とは
「銀行員は安定している」そう思われていた時代は、もう過去のものかもしれません。みずほ銀行は、今後10年間で1万9000人の削減を計画しています。三井住友銀行も、店舗統廃合を加速させています。
メガバンクでさえ、この状況です。「大きすぎて潰れない」と言われていた存在が、今、大規模なリストラと店舗削減を進めている。これが意味することは何でしょうか。
地方銀行は、さらに厳しい状況に置かれているかもしれません。メガバンクの大規模リストラが話題になる中、「地方銀行は安定」という常識も揺らぎ始めています。群馬銀行で働く人たちから、最近こんな声が聞こえてきます。
「県内ではメインバンクだけど、本当にこのままでいいのか」「年収の実態と公式発表が全然違う」「支店がどんどん消えていく…」これらは、決して大げさな悲鳴ではありません。構造的な問題が、現場に静かに圧をかけている — その実態を、冷静に見ていきましょう。
営業エリアの人口減少が貸出需要を直撃する現実
群馬県は全国平均よりも人口減少のスピードが速い。これは、地方銀行にとって死活問題です。群馬銀行は県内で圧倒的なシェアを占めています。
預金・貸出シェアは約45～51%。地元企業の45%がメインバンクとして利用している。これ自体は強みなのですが…問題は、その「メインバンク」たちが、次々と廃業していく ということです。
金利が低い時代、中小企業の経営は急速に悪化しています。製造業と農業が主要産業の群馬県は、特にその影響を受けやすい。融資先が減れば、銀行の貸出利鞘は縮小します。
新規顧客も増えにくい。群馬銀行の営業担当者たちは、「県内ではメインバンク扱いだが、県外営業では相手にされない」という状況を嘆いています。営業エリアが限定されている以上、これは避けられない構造的な限界です。
だからこそ、2025年4月に第四北越フィナンシャルグループとの経営統合を発表しました。2027年4月の実施予定。「単独では生き残れない」という経営判断が、背景にあります。
給与の公式値と実態のギャップが200万円以上｜若手の離職が止まらない理由
群馬銀行の平均年収は、有価証券報告書では 723万円 と記載されています。ところが、OpenWorkなどの口コミサイトでは 536万円。キャリコネでは 477万円～486万円。
開きは200万円近い。なぜこんなことが起きるのか。答えは簡単です。
公式値は、経営層の高給が全体の平均を押し上げているから です。実際に働いている若手行員の年収は、これより大幅に低い。入行1年目～4年目は、昇給がほぼありません。
基本給の上昇は限定的。同期で他の銀行に転職した友人より、給与が安いまま。そういう状況が3～4年続くわけです。
行員からは、こんな声が上がっています。「成績が良くてもボーナスに色が付く程度。昇給額が大きくなることはほとんどない」（営業、在籍6～10年）「1年で退職してもらった同年代の他銀行員より安い」（営業、1年目で退職）2024年7月にジョブ型人事制度を導入し、「実力主義への転換」を掲げましたが、現場の評価は冷ややかです。「若手はあまり給与が増えない」という指摘も出ています。
重要なのは、この時間ロスです。20代後半から30代初盤の「人生で最も成長できる時期」に、昇給がないまま過ごす。同年代の他の銀行員や業界の人間と、給与差が広がり続ける。
その間に、「この銀行に居続ける理由」がどんどん薄れていくのです。
店舗統廃合の加速と人員削減｜昇進枠はどこへ消えるのか
2021年以降、群馬銀行は毎年12店舗規模でブランチ・イン・ブランチ方式での店舗統合を進めてきました。2022年6月までに大型統合が完了。その後も、2023年、2024年春と統合が続いています。
店舗が減れば、必然的に人も減ります。行員からは、こんな現実的な不安が聞こえます。「支店統合や人員削減が常態化しており、モチベーションが下がる」（女性、30代）もっと深刻なのは、「昇進枠が消える」という問題です。
支店が減れば、支店長や副支店長といった管理職ポストも減ります。年功序列の銀行では、ポストが減ることは「昇進のチャンスが減る」ことを意味します。一度減ったポストは、経営統合後も戻ってこない可能性が高い。
特に注目すべきは、25～35歳の男性行員に「空白層」が存在する という指摘です。3年目から6年目にかけて、大量に転職が起きているのではないか — 複数の口コミから読み取れます。理由は明白です。
「あと20年働く先に見える道が、見えなくなった」
体育会系文化とノルマ主義｜「古い体質」が改善されない実態
群馬銀行には、強固な「体育会系文化」が根付いています。ノルマは膨大です。投資信託、保険、各種ローン…営業目標が常にある。
1～3年目は「キャリア期間」として罰はないとされていますが、指導は厳しい。その先も、ノルマは増え続けます。行員の言葉は、重みがあります。
「ノルマが膨大な上、『将来このままだと売らなくていい商品も売らされる』という危機感がある」（営業）「早朝の強制出社が常態化している支店も多い。残業削減は建前、実態は別」「法令遵守とはいいながら、『お客様のため』という名目で営業圧力が高まっている」さらに問題なのは、パワハラや叱責の文化が『改善していない』という証言です。「体育会系・パワハラが残る。叱責の強い言葉に長年耐えてきたが改善していない」（退職者）「支店長の人間性に問題があり支店の雰囲気が最悪。日に日に数字が上がっていく」（在籍10～15年）ホワイト500認定を受け、「働き方改革」を謳っていても、支店によってはこの現実が続いているわけです。
デジタル化の遅れが競争力を蝕む｜古い体質が統合の足かせに
メガバンク、ネット銀行との競争が激化する中、群馬銀行のデジタル化は「遅い」という評価が支配的です。「全ての施策導入が遅い。手数料も高く、顧客離れが進む」（女性渉外）「メガバンクやネット銀行と比較すると、施策を打つスピード感が遅い」（SE、在籍11～15年）古いシステムは、新しい経営統合の足かせにもなります。2027年4月に第四北越銀行と統合する際、勘定系システムの統一が必要になります。
日本IBMが支援する「TSUBASA基幹系システム」への統合が検討されていますが、古いレガシーシステムの刷新には膨大な時間と費用がかかる。その間、競争力はさらに落ちていく可能性があります。
転勤と結婚・出産のタイミング｜人生計画が銀行仕様に合わせられる構造
総合職行員は、「群馬銀行のすべての拠点が勤務地」です。転居を伴う転勤がある。これ自体は、どの銀行でも同じですが、群馬銀行では 「4年目までに人生計画が変わる」という指摘が出ています。
「他県への転勤がある中で4年目までに結婚・出産する人が多く、キャリアが中断されやすい」（女性、20代で退職）女性管理職は確かに増えています（23.1%）。育休・時短制度も充実しています。ただし、昇進の多様性は限定的です。
女性管理職のほとんどが、窓口営業での管理職採用に留まっているという現実があります。言い方を変えると、「女性にはキャリアの天井がある」という構造的な問題が残っているわけです。
経営統合で変わるのか、それとも…｜2027年4月を控えて
群馬銀行は2025年4月24日に、第四北越フィナンシャルグループとの経営統合基本合意を発表しました。2027年4月の実施予定です。公式には、「トップクラス地銀へ」という見解が示されています。
統合によって経営基盤が強化され、デジタル化も進む。新たな事業機会も生まれる。理屈としてはそうです。
しかし、現場では不安が渦巻いています。統合前の今が、離職ラッシュになる可能性が高いのです。理由は、人事異動と処遇の不透明感。
誰がどこに配置されるのか。給与体系はどうなるのか。昇進の道は？
これらが不透明なまま、2年間待たされる行員たちの心理的負担は小さくありません。システム統一は進むでしょう。でも、企業文化の融合は未知数です。
群馬銀行が「やばい」のではなく、あなたの働き方を見直すきっかけ
群馬銀行が「やばい」銀行だと言うつもりはありません。県内での基盤は盤石です。地域インフラとしての信用度も高い。
福利厚生も充実している。そのすべてが嘘ではない。ただ、「安定」と「個人の成長」は別の問題だということです。
銀行全体が斜陽産業に向かいつつある時代に、「このままでいいのか？」という問いは、どの地方銀行でも響き始めています。群馬銀行の行員たちの不安も、その経営判断の反映です。経営統合も、人員削減も、デジタル化も — すべては、「単独では通用しない時代へ向かっている」というシグナルなのです。
その中で、個人として何ができるか。「銀行一筋」という選択肢が、最大のリスクになる可能性を、心の奥に置いておく必要があります。
では、どうすればいいのか？
銀行一筋は大きなリスクを伴う時代です。収入源を多様化することが重要。でも、「どうやっていいのか分からない」AI副業とか聞くけど、具体的に何をすればいいのか。
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