秋田銀行で稼げない理由と職員の給与実態、転職先の選択肢を解説

変わりゆく銀行業界―「安定」の幻想とは

「銀行員は安定している」そう思われていた時代は、もう過去のものかもしれません。みずほ銀行は、今後10年間で1万9000人の削減を計画しています。三井住友銀行も、店舗統廃合を加速させています。

メガバンクでさえ、この状況です。「大きすぎて潰れない」と言われていた存在が、今、大規模なリストラと店舗削減を進めている。これが意味することは何でしょうか。

地方銀行は、さらに厳しい状況に置かれているかもしれません。

秋田県が「人口減少ワースト」なのに、給与体系は県内相場のまま—昇給期待の現実

秋田銀行で働く人の給与を考える上で、避けて通れない数字がある。秋田県の人口減少率だ。秋田県は日本で最も人口減少・高齢化が進行する県の一つとされ、公式には「人口減少率および少子高齢化がワースト」と評価されている。

この不都合な現実が、給与体系に直結しているのだ。秋田銀行の給与水準は、県内企業と比べれば「恵まれている」部類に入る。退職金、企業年金、財形貯蓄、持株会など、福利厚生も整っている。

しかし、その「恵まれた給与」は、何に基づいているのか。答えは、営業エリアの経済規模と地域需要だ。銀行の給与体系は、預金・融資といった営業ボリュームに連動する。

秋田県内のシェア預金・融資が「ともに5割超」という圧倒的ポジションが、現在の給与水準を支えているに過ぎない。

地銀の給与は地域経済に連動する構造の罠

地方銀行の給与は、本社機能が集中する大都市圏の大手銀行とは比較にならない。同じ銀行員でも、東京の大手行で働く人と秋田銀行で働く人の生涯年収は大きく異なる。その差は、単なる「企業規模」ではなく、営業基盤となる地域経済そのものなのだ。

秋田県の実質経済は、30年以上にわたって縮小傾向にある。人口が減れば、貸出先企業も減る。融資額は減少し、預金も集まりにくくなる。

金融機関の収益源である「利ざや」も当然圧迫されていく。その状況下で、給与だけが据え置かれることはない。少なくとも、昇給期待は慎重に考える必要がある。

秋田銀行の職員の平均年齢は40.5歳、平均勤続年数は17.8年という数字も考慮すべきだ。長く勤めているほど、給与は上がるはずだ。だが、同時に昇進枠は限定されている。

中堅層（20代後半〜40代前半）の職員が抱く「昇給への期待」は、実は経営側にとって最も難しい課題なのだ。

預金減少が続く中での人件費圧迫、ボーナス削減の可能性

秋田銀行の2024年3月期の経常収益は370億円だ。一見するとそれなりの規模に見えるが、営業エリアが秋田県内に集中していることを考えると、この数字がどれだけの「密度」を持っているかが問題になる。秋田県内の人口動態は、今後さらに加速する。

若年女性の流出が特に顕著であり、これは人口減少の最も深刻な形態だ。働き手が減るだけでなく、消費者も減り、企業の事業継承も困難になっていく。つまり、銀行の与信先そのものが減少していくのだ。

預金が減れば、運用益は下がる。融資が減れば、利息収入は減少する。その一方で、人件費は固定費として残る。

1,293名の職員を抱える秋田銀行にとって、人件費の削減は避けられない課題となっている。すでに業界では、ボーナス削減やベースアップの凍結が相次いでいる。秋田銀行も例外ではないだろう。

営業基盤が収縮する環境では、給与も収縮する構造だ。「安定している」と思ってこの銀行を選んだ職員にとって、この現実は予想外かもしれない。

79支店体制は過剰か、統廃合の波が秋田銀行を襲う日

秋田銀行は、秋田県内に広大な店舗ネットワークを展開している。79支店・出張所という数字は、営業カバレッジの広さを象徴していた。かつての高度成長期、これだけの店舗網を持つことは「安定」と「信頼」の証だったかもしれない。

だが、時代は変わった。デジタルバンキングの普及により、顧客が物理的な支店に訪れる必要性は急速に失われている。スマートフォンで送金ができ、ATMは全国どこにでもある。

年配層を除けば、わざわざ支店の窓口に行く人は減少している。そこに追い打ちをかけるのが、秋田県の人口減少だ。郡部では高齢化により営業機会が縮小し、一部の支店は事実上「待ちの営業」に転じている。

経営効率の観点から見れば、79支店は「過剰」に映っても不思議ではない。

若年女性流出で窓口業務の現場はすでに疲弊している

秋田銀行の窓口業務の現場では、構造的な問題が生じている。秋田県からの若年女性の流出が顕著だからだ。都市部に進学した若い女性が、地元に戻ってこない。

結果、窓口業務を担う層が極端に減少しているのだ。窓口は銀行の「顔」だ。顧客対応、書類処理、営業補助、コンプライアンス対応など、あらゆる業務が集中する。

その窓口を支える人的資源が不足すれば、現場の負担は急増する。限られた人数で回転させるため、時間外労働が増え、ストレスも高まる。秋田銀行の職員が「稼げない」と感じるのは、単に給与の絶対額の問題ではなく、給与に見合う業務量と労働環境がアンマッチしているからかもしれない。

時給換算すれば、他業種と比較して競争力がない可能性も高い。

「店舗数=安定の証」は昭和の幻想

秋田銀行が145年の歴史を誇るのは事実だ。1879年の創業以来、「地域共栄」を掲げて経営を続けてきた。その過程で、79支店というネットワークが構築されたのだ。

しかし、その79支店が、果たして職員にとって「安定」の証になっているのだろうか。むしろ、統廃合の対象として見えている職員も少なくないはずだ。効率化の流れは不可逆だ。

今後3年から5年で、支店数は必ず削減される。その時、ポストはどうなるのか。店舗統廃合は、人員配置の再編も意味する。

転勤先が消える職員も出るだろう。希望退職が募集されることもあり得る。つまり、見た目上の「店舗数の多さ」は、実は組織の不確実性を示すサインなのだ。

指定金融機関の看板も、経営安定性の保証にはならない

秋田銀行は、秋田県の指定金融機関だ。県庁の資金移動業務を一手に担うこのポジションは、かつては「永遠の安定」を意味していた。官公庁の資金は減らない。

県の予算が組まれる限り、その資金の移動先として指定金融機関は必要とされる。職員の中には、この「指定金融機関」という肩書きを、企業としての安定性の根拠だと考えている人も多いだろう。しかし、その認識は危険だ。

県庁の資金移動先多様化で特権的地位が揺らぐ兆候

全国の自治体では、ここ数年、指定金融機関制度に関する見直しが進んでいる。複数金融機関への資金分散、デジタル決済システムの導入により、地元地銀への依存度は確実に低下している。秋田県も例外ではない。

秋田銀行が「県の指定金融機関」であることは変わらないが、その特権性は徐々に侵食されている。他行でも県の資金を扱えるようになれば、競争環境は一変する。そこに至るまでの時間は、それほど長くないだろう。

指定金融機関としてのポジションは、ある種の「護送船団」的な保護を提供してきた。だが、その護送船団自体が解体されつつある時代に、秋田銀行はいかに経営を維持するのか。職員の給与や昇進機会は、その経営課題と直結している。

145年の歴史と「地域共栄」の理念が、実は足かせになっている理由

秋田銀行が何度も強調する「地域共栄」という理念。1879年の創業以来、この言葉を掲げて経営を続けてきた。それ自体は、尊いものかもしれない。

しかし、その理念が現在の経営を制約しているという視点を持つ必要がある。「地域共栄」は、秋田県を営業基盤とすることの正当化になってきた。他地域への事業展開は限定的だ。

結果、秋田県内シェア5割超という高いポジションは得たものの、地域経済そのものが縮小する時代には致命的な弱点になる。

新規事業・デジタル化で後れをとる地銀の宿命

地方銀行は、大手銀行と比べてデジタル化への投資が遅れている。秋田銀行も例外ではない。フィンテック企業、デジタルバンキングプラットフォーム、ブロックチェーン活用など、次々と生まれるイノベーションに、地銀が追いつくことは極めて困難だ。

秋田銀行の経営側も、この課題を認識しているはずだ。「超高齢社会対応」を展望しているという情報からも、危機感がうかがえる。だが、認識と実行のギャップは大きい。

資本力に劣る地銀が、大手と同じペースでデジタル化を進めることは、収益面で瞬く間に圧迫されることを意味する。その結果、秋田銀行で働く職員は、旧来的な営業スタイルを強いられ続ける可能性が高い。新しい領域での成長機会も限定的だ。

キャリア形成の選択肢が狭い環境では、若手職員の流出も加速する。

あきぎんの転職者たちが語る「限界を感じた瞬間」

秋田銀行から転職した職員の話を聞くと、共通のテーマが浮かび上がる。「このままだと、スキルが身につかない」「やりがいを感じられなくなった」「将来が見えない」転職後、IT系企業に身を置いた元行員は、「秋田銀行では定型業務ばかりだった。判断基準も上司の指示が全てで、自分たちで工夫する余地がなかった」と語る。デジタル領域での経験を積もうとしても、その環境が秋田銀行には存在しないのだ。

また、経営管理部門に配属された元職員は、「経営層の意思決定が遅い。新しいことに挑戦しよう、という気概に欠けている」と指摘する。組織文化として「地元に根ざす」ことが優先され、「市場競争に打ち勝つ」という緊迫感が不足しているという見立てだ。秋田銀行で「稼げない」という感覚は、給与額だけの問題ではなく、キャリアの成長可能性が制限されていることへの無意識的な不安かもしれない。

5年後、10年後、この銀行で自分のスキルはどこまで高まっているのか。その問いに対して、多くの職員は明確な答えを持っていないだろう。人口減少県を営業基盤とし、指定金融機関としての特権は徐々に侵食され、デジタル化では後手に回る。

そうした構造的な問題に直面する秋田銀行で働く職員たちは、今、重要な選択を迫られている。「このまま続けるのか」「別の道を探るのか」その決断の時は、すでに来ているのかもしれない。

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