ドイツ銀行をやめたいと感じるのはなぜ？働く人の本音と離職理由

変わりゆく銀行業界―「安定」の幻想とは

「銀行員は安定している」そう思われていた時代は、もう過去のものかもしれません。みずほ銀行は、今後10年間で1万9000人の削減を計画しています。三井住友銀行も、店舗統廃合を加速させています。

メガバンクでさえ、この状況です。「大きすぎて潰れない」と言われていた存在が、今、大規模なリストラと店舗削減を進めている。これが意味することは何でしょうか。

地方銀行は、さらに厳しい状況に置かれているかもしれません。

150年の歴史を持つ大手銀行でも、日本では東京本社1拠点――転勤がない代わりに見える構造改革の波

ドイツ銀行の日本拠点は、東京都港区の麻布台ヒルズにただ1つ。東京本社のみという、大手銀行としては異例の体制です。転勤がないという点では、地方への配置転換に悩む他銀行の従業員からは羨ましく見えるかもしれません。

しかし、その一拠点集約という構造の裏に隠れているのは、グローバル企業としての急速な変化です。ドイツ銀行で働く人が「辞めたい」と感じる背景には、単なる職場の人間関係や業務負担ではなく、この銀行の構造そのものが大きく変わっていることが関係しています。転勤がない安心感の一方で、その拠点そのものが「本当にこの先もあり続けるのか」という不安が、ぼんやりと心に残っている状態。

そういう人たちの声を聞くと、表面的には「やめたい」という言葉ですが、本当は「この銀行で働き続けることに、本当に意味があるのか」という深い問いが隠れていることに気づきます。

グローバル規模の統廃合が日本にも波及する日は近いのか

1870年の創立から150年以上、世界70カ国以上に展開してきたドイツ銀行。その規模と歴史は、確かに一つの安心感を与えていました。しかし、近年のドイツ銀行は、その規模を維持することそのものが課題になっています。

グローバルレベルでの構造改革は、既に開始されています。2019年から2020年にかけて、グローバル規模で約1.8万人の人員削減計画が発表されました。これは単なる人数調整ではなく、事業戦略の大転換を意味しています。

それまでのドイツ銀行は、投資銀行からリテール・バンキング、資産運用まで、幅広い事業を展開していました。しかし今、その多角化戦略は転換の途上にあります。日本支店で働く人たちの中には、この変化を敏感に感じている人も少なくありません。

「経営層はグローバル戦略について何も言ってくれない」「自分たちの部署の将来像が見えない」――こうした言葉は、決して管理職の情報開示が不十分だからではなく、ドイツ本国での急速な構造転換が、まだ日本の従業員にどう影響するのか、経営側にも完全には見えていないことの表れかもしれません。

「世界70カ国展開」の裏で進む、ドイツ本国での店舗削減の現実

世界70カ国以上に2,814拠点を持つドイツ銀行ですが、その中核であるドイツ本国では、既に大規模な店舗削減が進んでいます。2020年の時点で、ドイツ本国の店舗数は約500店舗から約400店舗へと削減されました。これは約2割の店舗閉鎖を意味します。

わずか1年の間に、そこまでの規模で統廃合が進んだということです。この流れがいつ日本に波及するのか。あるいは既に波及しているのか。

そうした不確実性が、ドイツ銀行で働く人の心に、静かに、しかし確実に影響を与えています。東京本社1拠点という体制は、統廃合の対象外のように見えますが、実際には「日本の支店は、今後も必要なのか」という問いに、経営側でさえ明確な答えを持っていないのではないか。そうした疑念が、働く人たちの間に広がっているのです。

辞めたいと思うのは、この不確実性の中で働き続けることが、心理的な負担になっているからかもしれません。

3年連続黒字でも日本の従業員は247名――成長する企業、縮小する日本チーム

2023年、ドイツ銀行はグローバルで3年連続の黒字を達成しました。業績は回復基調にあり、特にコーポレート・バンク部門の2023年第2四半期の純収益は、開始以来の最高額である20億ユーロに到達しています。企業として見れば、回復の兆しが確かに見えている状態です。

しかし、日本ではどうか。日本支店の従業員数は247名。これは2025年時点での数字です。

かつて日本は、ドイツ銀行のアジア太平洋地域における重要な事業基地でした。しかし、今その規模は、東京本社の247名という限定的な体制にまで集約されています。グローバルで黒字を達成している一方で、日本の人員は減少傾向にある。

この「成長と縮小の同時進行」という矛盾した状況が、日本支店で働く人たちに何をもたらすのか。それは、漠然とした不安です。「会社全体は成長しているのに、なぜ自分たちのチームだけ小さくなるのか」その問いに対して、明確な答えを得られない状況が続いています。

業績回復とスタッフ削減は同時に進む――あなたの部署は「効率化対象」かもしれない

企業の黒字化と人員削減は、決して矛盾しません。むしろ、それは経営効率化の標準的な戦略です。より少ない人数で、より多くの利益を生む――これが現代の大手金融機関の常識になっています。

ドイツ銀行も例外ではありません。グローバル規模での約1.8万人の削減計画は、業績回復と同時並行で進められています。つまり、ドイツ銀行の経営層にとって、黒字化は「人員削減によって達成された利益率改善」を意味するのです。

日本支店で働く人たちが感じている不安は、その延長線上にあります。「自分たちの部署は、本当に効率的か」「この職務に、本当に247名全員が必要なのか」経営側が効率化を追求すれば、当然そうした疑問が生じます。そして、その疑問に対する答えは、既に経営層の中で出ているかもしれない、という無言の恐怖があります。

つまり、業績が回復しているからこそ、人員削減の圧力は高まるのです。 それは逆説的ですが、現在のドイツ銀行という組織の現実そのものです。黒字化を喜ぶことと、自分たちのポストが減る可能性を同時に抱える。

そうした心理的矛盾を抱えながら働くことの疲労感は、決して本人の心が弱いからではなく、組織構造そのものから来るものなのです。

1872年から150年、日本は「事業基地」から「利益貢献機関」へ変わった

ドイツ銀行が日本に最初に拠点を開いたのは、1872年。横浜に初の海外支店を設置してから、150年以上の歴史があります。当初、日本支店は、ドイツとアジア太平洋地域を結ぶ重要な事業基地でした。

アジアの経済成長を背景に、日本支店の役割は拡大し、多くの従業員が配置されていました。しかし、その位置付けは大きく変わりました。現在のドイツ銀行にとって、日本支店は「事業基地」というより、むしろ「利益貢献機関」へと転換しています。

つまり、新規事業や人材育成の拠点ではなく、限定的な事業領域で、確実に利益を生み出すユニットとしての役割が求められているのです。この転換を象徴するのが、事業構造の変化です。ドイツ銀行の日本での展開は、ドイツ証券、ドイツ銀行東京支店、ドイチェ・アセット・マネジメントの3法人体制です。

これらは、それぞれ限定的な事業領域に特化した組織です。かつてのような、多角的で成長性のある事業展開ではなく、既に確立された特定の領域での「利益獲得」に特化した体制へと、シンプルに整理されてきたのです。そこで働く人たちが感じるのは、「この会社の中での自分たちの価値が、確実に下がっている」という実感です。

それは給与や待遇の問題ではなく、組織内での位置付けの問題です。成長性のある部署ではなく、効率化と利益率が問われる部署。昇進の見通しが限定される中で、毎年同じような業務を繰り返す。

その状況の中で「辞めたい」と思うのは、決してキャリア志向の強い人だけではありません。 むしろ、組織の中での自分たちの役割や未来について、誠実に考えている人ほど、その違和感に気づき、問い直すのです。

コーポレート・バンク20億ユーロ達成、でもリテール・バンキングは存在しない――日本支店の役割はすでに限定されている

2023年第2四半期、ドイツ銀行のコーポレート・バンク部門は、純収益20億ユーロという開始以来の最高額を達成しました。この数字は、グローバルな経営戦略の成功を示しています。ドイツ銀行は、大企業向けの投資銀行業務に経営資源を集中させ、そこで確実に利益を生み出す構造へと転換したのです。

一方、日本支店ではどうか。ドイツ銀行は、日本でリテール・バンキング、つまり個人顧客向けの銀行業務をほぼ展開していません。個人向けの商品やサービスは限定的です。

代わりに、日本支店の役割は、コーポレート・バンク部門を支える補助的な機能や、特定の金融商品の販売に特化してきています。つまり、グローバルで最高益を達成しているコーポレート・バンク領域には、日本支店はほぼ関与していないのです。むしろ、日本支店が貢献しているのは、その「周辺領域」です。

その周辺領域での競争力や成長性が、どれほど求められているか。それは、コーポレート・バンク20億ユーロという数字の前では、相対的に見えなくなってしまいます。働く人たちの心理的な負担は、ここから生まれます。

会社全体は成長している。しかし、自分たちの部署は、その成長の中心ではない。むしろ、効率化を求められる周辺領域である。

その現実を、毎日の業務を通じて、確認させられ続けるのです。このような位置付けの中で働くことの疲労感は、給与や残業時間では説明できません。 それは、組織の中での自分たちの価値や未来が、確実に限定されていることへの、深い失望感なのです。

設立から154年、ドイツ本国では約400店舗に削減――あなたの「支店」は何年後まで存在するか

1870年の創立から154年。ドイツ銀行はドイツ国内で、幾度もの経済危機や産業転換を経験してきました。しかし、それでも存在し続けてきた企業です。

その長い歴史の中で、ドイツ銀行は、ドイツ国内に広大な支店網を構築していました。しかし、現在、その支店網は急速に縮小しています。ドイツ本国では、約500店舗の支店ネットワークが、わずか数年で約400店舗へと削減されました。

2割近い店舗が、この期間に閉鎖されたのです。この現実が意味するのは何か。それは、銀行という業態そのものが、物理的な拠点の必要性を失いつつあるということです。

デジタル化の進展により、顧客は支店を訪れる必要がなくなりました。オンライン取引が主流になり、紙の手続きは過去のものになりつつあります。その中で、支店という物理的な施設は、維持費だけがかかる「負債」へと転換してしまったのです。

日本支店が東京本社1拠点という体制であるのは、実は前向きな選択というより、デジタル化時代への適応戦略の一つかもしれません。複数拠点を維持する必要がなくなったから、集約したのです。しかし、働く人たちにとって、その背景を知ることは、むしろ不安を増幅させます。

2020年に約2割の店舗を閉鎖、1.8万人の人員削減計画――この流れは日本にも来ている

2019年から2020年にかけて発表されたドイツ銀行の構造改革計画は、銀行業界全体に衝撃を与えました。約1.8万人の人員削減、店舗の20%以上の閉鎖、事業の選別。これは、単なる不況下での一時的なリストラではなく、ビジネスモデルそのものの転換を意味していました。

この計画は、段階的に実行されています。ドイツ本国での実績が示すように、計画は着実に進められているのです。そして、問題は、この流れが日本にも波及する日が近づいているということです。

ドイツ銀行のグローバル戦略は、「コアビジネスへの集中」です。すべての地域の、すべての事業に等しく経営資源を配分するのではなく、利益貢献度の高い領域に集中する。その枠外の事業や拠点は、統廃合や撤退の対象になるのです。

日本支店が、その枠内にあるのか、枠外にあるのか。働く人たちは、その答えを知りません。経営層も、完全には見えていないかもしれません。

しかし、ドイツ本国での約2割の店舗閉鎖という「前例」がある以上、日本も他人事ではないという危機感は、自然と生まれます。「もしかしたら、自分たちの支店や部署も、その対象になるかもしれない」 そうした可能性が、完全には否定できない状況。その不確実性の中で、毎日業務をこなし、数字を追い、上司の期待に応えようとする。

その心理的負担は、決して過度なものではなく、むしろ極めて正当なものです。辞めたいと思うのは、この銀行が「安定した雇用」を保証できなくなったことへの、正直な反応なのです。大手銀行という看板だけでは、もはや安心を得られない時代。

そのことに、最も敏感に気づいているのは、ドイツ銀行で働く人たち自身です。あなたが感じている不安や違和感は、個人の問題ではなく、この組織の構造的な変化を前にした、ごく自然な反応なのです。

では、どうすればいいのか？

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